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 形質細胞骨髄腫は、骨髄が侵され浸潤部位に腫瘤形成や骨破壊を来たす。骨病変は骨格系に病変を示すが、頭蓋骨、骨盤、椎骨、肋骨、大腿骨、鎖骨に多い[Groganら.2001]。今村ら(1962)による初発症状を示す。①...
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 形質細胞骨髄腫は、骨髄が侵され浸潤部位に腫瘤形成や骨破壊を来たす。骨病変は骨格系に病変を示すが、頭蓋骨、骨盤、椎骨、肋骨、大腿骨、鎖骨に多い[Groganら.2001]。今村ら(1962)による初発症状を示す。①腰痛、四肢、背部の痛み(67.5%)、②全身倦怠感(17.8%)、③
発熱(11.5%)、④体重減少(9.9%)、⑤貧血症状(8.0%)などである。最近では、健康診断や外来検査時に偶然に発見されることがある。
骨髄腫は治療抵抗性で、MP(アルケラン、プレドニン)療法を中心とした化学療法では生存期間中央値は約3年で、10年以上長期生存は2~7%である[Tsuchiyaら.1994]。
 本例は、多発性骨髄腫の診断のもとMP療法が施行され、無治療で2ヶ月に1回経過観察していた。診断1年6ヶ月後、IgG6,924mg/dl、貧血の進行、TP上昇よりMP療法が再開された。軽快とともに1年は無治療で経過観察後、末梢血に骨髄腫細胞の出現に伴いプレドニン療法が行なわれた。
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■症例詳細データ
FAB分類 > 慢性 (成熟型) リンパ性白血病 (CL... > B細胞白血病 > 多発性骨髄腫 (MM)
性別
年齢 80-84
取得年代 2000-2004
主訴 発熱、腰痛。
既往歴 高血圧。
現病歴 腰痛を訴え近医を受診するも、腰椎の老人性変化によるものと診断された。
牽引療法を受けるも腰痛は改善されず、血清蛋白電気泳動にてM蛋白が認められ、骨髄腫の疑いにて入院となった。
腰椎単純X線にて圧迫骨折を認める。
検査所見 WBC 7,750/μl (St-Seg32.0, Ly64.5, Mo.3.0, Eo0.5%)
RBC 362万/μl、Hb 11.6g/dl、Ht 33.8%、
MCV 93.3fl、MCH 32.0pg、MCHC 34.3%、PLT 18.9万/μl、
NCC 11.6万/μl、Mgk 15.0/μl (Ab.ly35.6%)、
LD 383IU/l、TP 8.8g/dl、CRP 0.48mg/dl、BUN 23.8mg/dl、UA 7.8mg/dl、Ca 8.9mg/dl、AST 40IU/l、IgG 4,382mg/dl(κ型)、
IgA 60mg/dl、IgM 53mg/dl、M蛋白 8.8%、尿中BJ-protein(0)
末梢血所見 血液像にて赤血球形態に連銭形成がみられる他にリンパ球が優位(64%)であった。
リンパ球の形態には特に異常所見は見当たらなかった。
赤血球の連銭形成の配列(side by side)は、赤血球の面と面が数珠つなぎになっていることが特徴で、赤血球同士が凝集するものとは区別する必要がある。
骨髄所見 正形成像の骨髄では形質細胞が35.6%みられた。
大きさは中型で核は円形、好塩基性の細胞質には核周明庭(ゴルジ野の発達)がみられ典型的な形質細胞の像を呈していた。
細胞化学所見 形質細胞はACP染色に散在性の陽性で、PO染色、PAS染色、EST染色は陰性であった。
形態診断 形質細胞は35.6%であり、数的基準(15%以上)を越えることより多発性骨髄腫を疑った。
それらには核小体は見当たらず、Greipp分類(1985)の成熟型と思われた。
免疫グロブリン定量、電気泳動よりIgG(κ)が証明された。
免疫学的所見 CD38、CD79a、CD138、cIg (+)
CD19、CD20、sIg (-)
分子生物学的所見 46,XY‥20/20
リンパ節所見 生検は未施行。
臨床診断 多発性骨髄腫の診断のもと、MP(アルケラン、プレドニン)療法が施行され、無治療で2ヶ月に1回経過観察していた。
診断1年6ヶ月後、IgG6924mg/dl、貧血の進行、TP上昇よりMP療法が再開された。軽快とともに1年は無治療で経過観察後、末梢血に骨髄腫細胞の出現に伴いプレドニン療法が行なわれ経過観察中である。