■ご利用に際して

本サイトは、厚生労働省がん研究助成金総合研究事業および、厚生労働省第3次対がん総合戦略研究事業にて構築され、2014年3月にその事業を終了しております。現在サイトに掲載されている内容は当時の登録状況のまま公開しているため、必ずしも最新の医療に沿う内容ではない場合がございます。ご注意ください。

ご不明点がありましたら九州がんセンターまでお問い合わせください。

JapaneseEnglish

 前駆T細胞性リンパ芽球性白血病(T-ALL)はリンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)と共にT細胞系にコミットされた未熟なリンパ芽球の腫瘍である。
T-ALLの腫瘍細胞は末梢血、骨髄を占め、T-LBLではリンパ節もしくはリンパ...
(続きを読む)
 前駆T細胞性リンパ芽球性白血病(T-ALL)はリンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)と共にT細胞系にコミットされた未熟なリンパ芽球の腫瘍である。
T-ALLの腫瘍細胞は末梢血、骨髄を占め、T-LBLではリンパ節もしくはリンパ節外に腫瘤を形成する。腫瘍性病変があり、骨髄での腫瘍細胞の浸潤が25%以下の場合は随意的であるがLBLされる。T-ALLは全体の25%を占め、小児ALLの約15%、成人ALLの25%を占めるとされる。
     
 本例は、芽球が骨髄から末梢血にもみられ白血化の状態であった。
芽球の光顕的所見では、PAS染色の粗大顆粒状~点状の陽性(40%)が唯一リンパ球系を示唆するものであった。
表面形質はTcellの性格であり、TCRδ遺伝子を認めたことより、T前駆細胞リンパ芽球性白血病と診断された。
(たたむ)

■症例詳細データ
FAB分類 > 急性リンパ性白血病 (ALL) > L1;小細胞性、均一性、N/C比高い
性別
年齢 05-09
取得年代 2000-2004
主訴 白血球増加、リンパ節腫大。
既往歴 特になし。
現病歴 リンパ節腫大、縦隔腫瑠、肝腫(6cm)、脾腫(5cm)
検査所見 WBC 35,800/μl、RBC 374万/μl、Hb 10.1g/dl、Ht 29.6%、
MCV 79.1fl、MCH 27.0pg、MCHC 34.1%、PLT 0.7万/μl、
NCC 74.3万/μl、Mgk 0/μl、
LD 3,035IU/l、IgG 770mg/dl、IgA 65mg/dl、IgM 108mg/dl
末梢血所見 白血球増加(35,800/μl)の血液像にて芽球は60%みられた。
N/C比が高く一部に核形不整を認める。
骨髄所見 過形成像の骨髄で芽球は90%、全般に小型でN/C比は高く、クロマチンは繊細から粗荒である。
形態学的にはリンパ球系が示唆された。
細胞化学所見 芽球はPO染色に陰性、PAS染色に粗大顆粒状の陽性が8%、点状の陽性が40%(強陽性)であった。N-EST染色は陰性であった。
形態診断 骨髄の芽球は90%、全般に小型でN/C比が高く、クロマチンは粗荒、PO染色が陰性、PAS染色で48%が強陽性であったことより急性リンパ性白血病(ALL)を疑った。
本例のようなPAS染色の陽性態度はリンパ球系を強く支持するものである。
免疫学的所見 骨髄:TdT、CD3、CD7、CD8 (+) HLA-DR (-)
リンパ節:TdT、CD3、CD4、CD8 (+)
分子生物学的所見 骨髄の染色体検査では、
46,XY,t(11;14)(p13;q11)の核型異常を認めた。
骨髄の遺伝子検査では、 TCRδ遺伝子(RBTN2/TCRδ)を認めた。
リンパ節所見 左頚部リンパ節捺印標本にて、腫瘍細胞は単一に増殖し、核は円形から類円形で、核小体や核形不整を一部に認めた。
形態、表現型からTcellを示唆するものであった。
臨床診断 芽球は骨髄から末梢血にもみられ白血化の状態であった。
芽球の光顕的所見からPAS染色の粗大顆粒状~点状の陽性(40%)が唯一リンパ球系を示唆するものであった。
表面形質はTcellの性格であり、TCRδ遺伝子を認めたことより、T前駆細胞リンパ芽球性白血病と診断された。