■ご利用に際して

本サイトは、厚生労働省がん研究助成金総合研究事業および、厚生労働省第3次対がん総合戦略研究事業にて構築され、2014年3月にその事業を終了しております。現在サイトに掲載されている内容は当時の登録状況のまま公開しているため、必ずしも最新の医療に沿う内容ではない場合がございます。ご注意ください。

ご不明点がありましたら九州がんセンターまでお問い合わせください。

JapaneseEnglish

 一過性骨髄増殖症(TMD)は生後6週以内に発症し、肝脾腫大が主で白血球増加にて白血病細胞を多数認めるが無治療で数週~2ヶ月で軽快することが多い。
 本例は、Down症を背景に白血球増加のもと末梢血、骨髄に...
(続きを読む)
 一過性骨髄増殖症(TMD)は生後6週以内に発症し、肝脾腫大が主で白血球増加にて白血病細胞を多数認めるが無治療で数週~2ヶ月で軽快することが多い。
 本例は、Down症を背景に白血球増加のもと末梢血、骨髄に芽球が多数出現し、芽球はPO染色に陽性よりAMLを疑った症例である。しかし、生後1ヶ月の発症と芽球が骨髄よりも末梢血に多く染色体で21トリソミーが認められたためAML-M7と一過性異常骨髄増殖症(TAM)双方を疑った。芽球は無治療で約3週間後に完全に消失したためTAMを疑った。本例の芽球はPO染色に一部陽性(3%以下)であるも大半が陰性でありAML-M7との鑑別が余儀なくされる。芽球の表現型は血小板系を示唆するものであり、GATA1遺伝子が関与する報告(Greene et al.2003)があり、これがTAMの20~30%がAMLへ移行する原因となるという報告(Massey et al.2006)もある。
(たたむ)

■症例詳細データ
FAB分類 > その他
性別
年齢 00-04
取得年代 2000-2004
主訴 白血球増加。ダウン症(21-trisomy)。
既往歴 特になし。
現病歴 ダウン症の診断にて黄疸、肝脾腫大を認め、白血球増加に芽球を認めたため入院となった。
検査所見 WBC 13,800/μl (芽球52%)、RBC 412万/μl、
Hb 12.6g/dl、Ht 35.2%、PLT 25.6万/μl、
MCV 85.4fl、MCH 30.6pg、MCHC 30.5%、
NCC 48.6万/μl (芽球41%)、
IgM 260mg/dl
末梢血所見 白血球増加(13,800/μl)にて芽球は52%、それらは大型でN/C比は高く、クロマチンは粗網状で核形不整や核小体がみられた。
骨髄所見 低形成の骨髄にて芽球様は40%、正常に比べ大型で、クロマチンは粗網状、核形不整や核小体を有し、細胞質の好塩基性は強度のものもみられた。
細胞化学所見 芽球様はPO染色に一部が陽性(3%以下)であったが大半は陰性であった。ACP染色では散在性と一部凝集状の陽性であった。
形態診断 末梢血と骨髄にて芽球が40%以上を占め、それらがPO染色に陽性のことからAML-M2を疑った。しかし、芽球の割合が骨髄に比べ末梢血に多いことは通常のパターンではなく、ダウン症が背景にあることから一過性骨髄増殖症(TMD)も考慮した。
免疫学的所見 CD7・CD13・CD33・CD41・CD61(+), HLA-DR(±)
分子生物学的所見 47,XY+21[20]
リンパ節所見 未施行。
臨床診断 骨髄より末梢血の芽球が増加し、21-trisomy以外の核型異常がないことより、経過観察も念頭におかれていた。結局、約3週間後に芽球は完全に消失したため一過性異常骨髄増殖症(TAM)と診断された。