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 本例は、四肢に4cm大の皮下出血を認め、1週間前より口唇部に3cm大の皮下出血を認めたものである。薬剤歴が不明であったが、好中球減少については抗顆粒球抗体が陽性を示し、血小板減少についてはPA-IgGが高値よ...
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 本例は、四肢に4cm大の皮下出血を認め、1週間前より口唇部に3cm大の皮下出血を認めたものである。薬剤歴が不明であったが、好中球減少については抗顆粒球抗体が陽性を示し、血小板減少についてはPA-IgGが高値より双方が合併した自己免疫性疾患と診断された。副腎皮質ステロイドやG-CSFの投与によって好中球と血小板は正常レベルに回復した。
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■症例詳細データ
性別
年齢 80-84
取得年代 2010-2014
主訴 皮下出血
既往歴 70歳:慢性気管支炎・高血圧症
現病歴 10年前から慢性気管支炎および高血圧症にて近医を受診していた。最近になって白血球、血小板減少を指摘されたため当院を紹介された。3週間前より四肢に4cm大の皮下出血を認め、1週間前より口唇部に3cm大の皮下出血を認めた。
検査所見 WBC1,200/μl (St2, Seg5, Eo2, Ba3, Ly40, Mo45%)
RBC383万/μl、Hb10.9g/dl、Ht36.6%、MCV95.5fl、MCHC29.8%、PLT0.4万/μl
TP5.4g/dl、AST15IU/l、ALT12IU/l、LDH241IU/l、BUN12.5mg/dl, T-Bili 0.9mg/dl、 Coombs(-)、Haptoglobin32mg/dl、VB12 120pg/ml、FA3.0mg/dl、
PA-IgG1,090ng/107cells、
CRP1.0mg/dl、NCC12.6万/μl(blast1.0%)、PT12.3sec、PT92.3%、PT-INR1.05、 APTT29.0sec、anti-granulocyte antibody(+)
末梢血所見 白血球減少(1,200/μl)のなか末梢血の好中球は著減(84/μl)していた。単球は45%を呈したが絶対数は540/μlであった。
骨髄所見 骨髄は正形成でM/E比は7.3と顆粒球系の増加がみられたが、好中球への分化度が極端に低く、成熟停止がみられた。巨核球の増加がみられ多くは核分葉はみられるも好塩基性型が多く血小板の産生はみられなかった。芽球は3.0%と正常であった。
細胞化学所見 PO染色に顆粒球系は陽性であった。PAS染色とFe染色に赤芽球は陰性であった。PAS染色に巨核球は塊状に陽性であった。
形態診断 末梢血の好中球減少症と骨髄の顆粒球系の成熟停止が特徴であり、その原因の検索が望まれる。まずは薬剤歴を調査することで、それによる自己免疫性好中球減少症を疑うことになる。または骨髄の好塩基性型巨核球の増加より本態性血小板減少性紫斑病(ITP) も考慮する必要がある。
免疫学的所見 N.D
分子生物学的所見 46,XY
リンパ節所見 N.D
臨床診断 薬剤歴が不明であったが、好中球減少については抗顆粒球抗体が陽性を示し、血小板減少についてはPA-IgGが高値より双方が合併した自己免疫性疾患と診断された。副腎皮質ステロイドやG-CSFの投与によって好中球と血小板は正常レベルに回復した。