■ご利用に際して

本サイトは、厚生労働省がん研究助成金総合研究事業および、厚生労働省第3次対がん総合戦略研究事業にて構築され、2014年3月にその事業を終了しております。現在サイトに掲載されている内容は当時の登録状況のまま公開しているため、必ずしも最新の医療に沿う内容ではない場合がございます。ご注意ください。

ご不明点がありましたら九州がんセンターまでお問い合わせください。

JapaneseEnglish

転移性腺癌 Metastatic adenocarcinoma
     骨髄転移は主として血行性であるため赤色髄を有する部位の転移が多く、脊椎骨、肋骨、胸骨、頭蓋、大腿骨などへの転移が知られている。
     転移性悪性細胞のチエックポイ...
(続きを読む)
転移性腺癌 Metastatic adenocarcinoma
     骨髄転移は主として血行性であるため赤色髄を有する部位の転移が多く、脊椎骨、肋骨、胸骨、頭蓋、大腿骨などへの転移が知られている。
     転移性悪性細胞のチエックポイントは以下のごとくである。
①患者情報を把握する。
②弱拡大による辺縁部のスクリーニングから始める。
③大型細胞のみならず小型細胞にも注目する。
④集塊状の細胞に注目する。孤立性散在性にも注目する。
⑤円形~奇妙な形状の細胞、無核のものにも注意する。
⑥免疫染色を有効に利用する。
腺癌のなかには細胞質に粘液を充満させ、印鑑細胞状となって出現するものがある。印環細胞型で出現する腺癌は消化器癌に多く、骨髄転移の多くは胃癌からなる。消化器原発は粘液に対しPAS染色に陽性の場合が多く、肺癌の場合は陽性度は低いとされる。
[阿南ら:形態からせまる血液疾患.近代出版.1999]
(たたむ)

■症例詳細データ
性別
年齢 65-69
取得年代 2000-2004
主訴 舌より出血傾向あり。
既往歴 25年前胃癌。
現病歴 舌より出血し来院、DICの診断後、CTにて骨髄内(前立腺~直腸間)にmassを認め、骨髄穿刺が施行された。
表在リンパ節腫脹(-)、紫斑(-)、点状出血(-)
検査所見 WBC 7,070/μl (St-Seg74, Ly26%)
RBC 352万/μl、Hb 9.2g/dl、Ht 32.0%、PLT 11.2万/μl、
MCV 90.9fl、MCH 26.1pg、MCHC 28.7%、Fibg 110mg/dl、FDP 147.5μg/ml、NCC 16.4万/μl、MgK 43.75/μl (腫瘍細胞+)、LD 183IU/l、Ca 10.0mg/dl、CRP 0.07mg/dl
末梢血所見 血液像にて著変はなかった。
骨髄所見 骨髄像にて集塊状の細胞がみられた。
集塊状の細胞の核は偏在性、クロマチンは粗網状で細胞質は強好塩基性であった。
核の大小不同性、極性の乱れ、核内構造の多様性、核偏在性などの所見は血液細胞ではみられない形態像であった。
これらの所見より腫瘍細胞を考えた。
細胞化学所見 腫瘍細胞はPO染色に陰性で、PAS染色では細胞質一面にび漫性の強陽性がみられた。
形態診断 骨髄における肥厚した細胞質内構造は粘液産生も考え、それらがPAS染色に強陽性を呈したことから骨髄転移像と思われ腺癌細胞を疑った。
免疫学的所見 未施行。
分子生物学的所見 未施行。
リンパ節所見 未施行。
臨床診断 形態学的所見などから腺癌の骨髄転移と診断された。
しかし、明らかな原発巣は認められず、原発不明癌の診断となった。治療はMTX/5FU、weekly taxolによる化学療法が開始された。以後3回の入退院を繰り返し、11ヶ月後初診のDICが進行したため、また全身倦怠感も増悪し、経口摂取困難となり入院となった。化学療法の適応もなく対症療法にて経過観察となった。