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 本例は基礎疾患として胃癌(BorrmannⅣ型のムチン産生型)があり、胃癌細胞の骨髄転移である。胃癌細胞は豊富な細胞質には粘液産生がうかがえ、PAS染色が強陽性であることよりムチン産生の腺癌がうかがえる。末...
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 本例は基礎疾患として胃癌(BorrmannⅣ型のムチン産生型)があり、胃癌細胞の骨髄転移である。胃癌細胞は豊富な細胞質には粘液産生がうかがえ、PAS染色が強陽性であることよりムチン産生の腺癌がうかがえる。末梢血の赤血球には破砕赤血球(ヘルメット状、トライアングル状、Burr cell)がみられることより、血栓性血小板減少性紫斑病(Thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic uremic syndrome:HUS)、血管内凝固症候群(DIC)によるものが考えられる。そのなかで出血傾向として血小板減少や凝固異常を認めることよりDICの方が考えられ、著明な血管内溶血の所見としての破砕赤血球の出現、網赤血球の増加は胃癌の播種性転移による細血管障害性溶血性貧血(Microangiopathic hemolytic anemia:MHA)を考えた。
MHAは種々の疾患を基礎として発症するが癌の広汎な転移を基礎として発症することが多く、なかでもムチン産生癌に合併することが多いとされる。
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■症例詳細データ
性別
年齢 50-54
取得年代 1985-1989
主訴 心窩部、貧血、黄疸あり。
既往歴 特になし。
現病歴 心窩部、貧血、黄疸あり。肝腫(3.5cm)、脾腫(-)
胃癌(BorrmannⅣ型のムチン産生型)
検査所見 WBC 16,800/μl (My.4, Met.4, St12, Seg48, Eo1, Ly27, Mo4, NRBC5/100w)
RBC 223万/μl、Hb 7.8g/dl、Ht 22.3%、PLT 6.8万/μl、
MCV 100.0fl、MCH 34.9pg、MCHC 34.9%、Ret 6.2%、NCC 23.2万/μl、MgK 20/μl (異常細胞+)、PT 11.4sec、APTT 41.1sec、Fbg 260mg/dl、FDP 3,215ng/ml、
D-ダイマー 6.9μg/ml、LD 1,957IU/l、T-bil 3.6mg/dl、
D-bil 2.8mg/dl、UA 3.7mg/dl、フェリチン 5236ng/ml
直接クームス(-)、関接クームス(-)
末梢血所見 大球性正色素性貧血にて破砕赤血球(ヘルメット状、トライアングル状、Burr cell状)を認めた。ほかに幼若顆粒球と赤芽球がみられた(白赤芽球症)。
骨髄所見 正形成像にて大きな細胞集団を認め、これらの立体構造は血液細胞以外のものと思われた。
大きさは40~50μm大の大型で豊富な細胞質には粘液産生がうかがえた。
細胞化学所見 大型の集塊細胞にPO染色は陰性であった。
PAS染色はび慢性の強陽性を呈した。
形態診断 大型の集塊細胞は立体的構造より血液細胞以外のものと同定し、基礎疾患に胃癌(BorrmannⅣ型のムチン産生型)があることより骨髄転移を考えた。豊富な細胞質のムチン産生がPAS染色に強陽性より腺癌細胞の集団を疑った。
赤血球の著明な破砕赤血球やDIC所見は血管内溶血が考えられ溶血性貧血の状態も考えられた。
免疫学的所見 未施行。
分子生物学的所見 未施行。
リンパ節所見 未施行。
臨床診断 著明な溶血性貧血と赤血球の断片化、血小板減少、凝固・線溶障害と高度な出血傾向より胃癌の播種性転移に伴う細血管障害性溶血性貧血(MAHA)およびDIC症例と診断された。