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 骨髄にて単球系(単芽球、前単球、単球)が80%以上を占め、そのなかで単芽球が80%未満の場合をM5bに診断される。低分化型、分化型の単球性白血病には
11q23の欠失や転座と強く相関し、t(8;16)(p11;p13)の核型...
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 骨髄にて単球系(単芽球、前単球、単球)が80%以上を占め、そのなかで単芽球が80%未満の場合をM5bに診断される。低分化型、分化型の単球性白血病には
11q23の欠失や転座と強く相関し、t(8;16)(p11;p13)の核型異常は血球貪食症候群とDICを併発することが報告されている。
     
 本例は初診にAML-M4を疑い、3ヶ月後に血球貪食の単球系の増加(80%)がみられたものである。芽球はNEC中の15%前後で以降単球系の成熟が65%みられ、顆粒球系は12%のことよりM5bと診断した。血球貪食像が顕著で、染色体はt(8;19)や複雑な構造異常がみられMOZ遺伝子を認めた。
本遺伝子はM4・M5のt(8;16)にみられるパターンであるが、本例はt(8;19)であるがDICの併発より、そのvariantが考えられた。
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■症例詳細データ
FAB分類 > 急性骨髄性白血病 (AML) > 単球性 (単球系が優位) > 分化型 (M5b)
性別
年齢 70-74
取得年代 2005-2009
主訴 全身倦怠感、労作時の息切れ。
既往歴 特になし。
現病歴 全身倦怠感、労作時の息切れにて近医を受診し、白血球の増加と血小板の減少を指摘され当科を紹介された。白血球増加(39,770/μl)にて芽球が8%みられ精査のため入院となった。リンパ節腫大(-)、肝脾腫大(+)。染色体は正常核型であった。入院約3ヶ月後、骨髄にて血球の貪食細胞が目立ち、染色体ではt(8;19)の核型異常を始めとして他の構造異常が認められた。
検査所見 【初診】
WBC 39,770/μl (芽球8, Pro8, My5, Meta3, St-
Seg56, Ly7, Mo10, Eo3%)、RBC 390万/μl、Hb 12.4g/dl、
Ht 35.7%、PLT 4.6万/μl、MCV 91.6fl、MCH 31.7pg、
MCHC 34.6%、NCC 33.6万/μl、MgK 80/μl(芽球58.4%,
Myeloid20.0, Mo18.5%)
Fbg 220mg/dl、FDP 21.6μg/ml、D-ダイマー 16.9μg/ml、
LD 2,093IU/l、sIL-2R 1,322μg/ml
【3ヶ月後】
WBC 2,240/μl (芽球0, Mo14%)
RBC 238万/μl、Hb 7.5g/dl、Ht 21.8%、PLT 3.4万/μl
末梢血所見 [初診]白血球増加にて芽球が8%みられ、単球は10%
(3,977/μl)であった。
[3ヶ月後] 白血球減少にて芽球は分類上認めなかった。
骨髄所見 [初診] 正形成にて芽球は56.4%みられ、以降顆粒球系 (18.5%)と単球系(20%)の混在がみられた。芽球と単球系の鑑別に苦慮するものがみられた。
[3ヶ月後] 正形成にて芽球は15%、以降単球系が65%みられ た。単球系の分化段階が優位のことより、芽球も単芽球の 可能性が強い。
細胞化学所見 PO染色は全般に陰性から弱陽性が多くみられ、染色性に問題を残す格好になった。EST二重染色では顆粒球系はクロロアセテートに陽性であったが単球系は弱陽性のものが多かった。
形態診断 [初診] 芽球と幼若細胞との鑑別に苦慮したが、顆粒球系と
単球系の混在は確実であり芽球が20%以上よりAML-M4を疑
った。
[3ヶ月後] 大型細胞が主体となり単球系の増加(80%)がみら れた。芽球はNEC中の15%前後で以降単球系の成熟が65%みられ、顆粒球系は12%であった。分化型の単球性白血病を 疑った。
免疫学的所見 [初診]
CD4・CD13・CD14・CD33・CD56・HLA-DR (+)
[3ヶ月後]
CD4・CD13・CD14・CD33・CD56・HLA-DR (+)
分子生物学的所見 [初診] 46,XY
[3ヶ月後]
46,XY,t(8;19)(p11;q13)[8]
46,XY,add(1)(q21),add(1)(q32),add(2)(q21),add
(5)(q31),t(8;19)(p11;q13),add(10)(p11)[2]
46,XY,add(1)(q21),add(1)(q32),add(2)(q21),add
(5)(q31),t(6;22)(p13;q11),t(8;19)(p11;q13),
add(10)(p11)[1]
その他類似核型 t(8;19)(q11;q13)[5]
46,XY[4]
MOZ遺伝子(+)
リンパ節所見 未施行。
臨床診断 初診はAML-M4と診断され、約3ヶ月後にAML-M5b様へ移行したものと診断された。しかも、経過後骨髄にて単球系における血球の貪食像が顕著で、染色体異常ではt(8;19)や複雑な構造異常がみられ、MOZ遺伝子を認めた。本遺伝子はM4・M5のt(8;16)にみられるパターンであるが、本例はt(8;19)であり、その亜型が考えられた。