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未分化大細胞リンパ腫(ALCL)はTリンパ球由来のリンパ腫で、30歳以下の若年者に多く、発熱、頚部・鼠蹊部リンパ節腫脹を伴う。腫瘍細胞は腎臓様の特徴的な形態を示し、びまん性大細胞型よりも大型で、EMAが陽性... (続きを読む)
未分化大細胞リンパ腫(ALCL)はTリンパ球由来のリンパ腫で、30歳以下の若年者に多く、発熱、頚部・鼠蹊部リンパ節腫脹を伴う。腫瘍細胞は腎臓様の特徴的な形態を示し、びまん性大細胞型よりも大型で、EMAが陽性のことから未分化癌との鑑別が求められる。染色体核型異常としてt(2;5)を認め、それに伴うALK1(anaplastic lymphoha kinase 1)の異常発現がALCLの発生に深く関与している(Shiota M.1994)。組織の免疫染色では、ALK-1のほかにCD30(Ki-1)、c-kit蛋白陽性を示し予後は良好とされる。
本例の末梢血・骨髄にみられた大型の異常リンパ球はT細胞の性格(HTLV-Ⅰ陰性)であり、TCR再構成を認めたことやリンパ節生検の免疫染色でALK陽性、CD30陽性、granzymeB陽性やt(2;5)の核型異常を認めたことより未分化大細胞リンパ腫-ALK陽性と診断された。 (たたむ)
 
■症例詳細データ
性別 |
男
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年齢 |
55-59
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取得年代 |
2010-2014
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主訴 |
持続性の弛張熱
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既往歴 |
特になし
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現病歴 |
全身倦怠感、嘔気、頭痛。全身性リンパ節腫大・肝脾腫(CT検査)。 悪寒、発熱が出現したため近医を受診し胆のう炎と診断された。その後、抗菌薬を投与されるも改善はなく当院を紹介入院となる。
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検査所見 |
WBC31,000/μl(St125.0,Seg5.0,Eo 0.5,Mo7.5,Ly5.0,Ab.Ly57.0%)、RBC421万/μl、Hb13.8g/dl、Ht38.2%、MCV90.7fl、MCH32.7pg、MCHC36.0%、PLT21.6万/μl 、NCC15.6万/μl、TP6.2g/dl、Alb 2.9g/dl、AST109IU/l、ALT13.9IU/l、LDH621IU/、BUN15.3mg/dl、Cre0.8mg/dl、UA3.1mg/dl、CRP26.8mg/dl、IgG1,290mg/dl、IgA250mg/dl、IgM52mg/dl、HTLV-Ⅰ(-)、sIL-2R 23,900/ml
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末梢血所見 |
白血球増加(31,000/μl)において異常リンパ球が57.0%みられた。それらは小型~中型で、N/C比は低く核形不整が顕著でクロマチンの増量がうかがえる細胞が多くみられた。なかには25μm大の大型がみられ、それらはN/C比は低く好塩基性の細胞質に空胞がみられた。
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骨髄所見 |
正形成像の骨髄では異常リンパ球は45.0%みられた。それらは末梢血と同様に中~大型で、N/C比は低く、核形不整が顕著でクロマチンの増量がみられた。核形不整には馬蹄形を呈するものがみられた。
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細胞化学所見 |
異常リンパ球はPO染色、EST染色に陰性であった。
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形態診断 |
末梢血、骨髄像にみられたリンパ球様細胞は異常リンパ球として捉えリンパ腫を疑った。形態異常よりATLを疑ったがHTLV-Ⅰ抗体が陰性より他のリンパ腫を考えることとした。細胞マーカーではCD2・7・8のみが強陽性であったことよりTリンパ腫の白血化を考えた。
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免疫学的所見 |
【末梢血】
CD2,CD7,CD8(+)、CD25,CD30,CD56(±)
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分子生物学的所見 |
46,XY,t(2;5)(p23;q35) [20/20]
TCR-Jβ2陽性(Southern blotting)
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リンパ節所見 |
【頚部リンパ節生検】
多型性の腫瘍細胞の増殖がみられ、腎臓様の特異的な形態異常を認めた。
【免疫染色】
ALK-1,CD30,granzymeB(+)
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臨床診断 |
末梢血・骨髄にみられた異常リンパ球はT細胞の性格(HTLV-Ⅰ陰性)であり、TCR再構成を認めたこと、リンパ節生検の免疫染色でALK-1陽性、CD30陽性、granzymeB陽性やt(2;5)の核型異常を認めたことより未分化大細胞リンパ腫-ALK陽性と診断された。
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