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 慢性骨髄性白血病(CML)は通常、慢性期(chronic phase)に引き続き、移行期(accelerated phase)を経て、急性期(blast crisis)へと移行する。慢性期の病変が数年継続した後の急性期では次の所見がポイント...
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 慢性骨髄性白血病(CML)は通常、慢性期(chronic phase)に引き続き、移行期(accelerated phase)を経て、急性期(blast crisis)へと移行する。慢性期の病変が数年継続した後の急性期では次の所見がポイントである。
 ①末梢血・骨髄で芽球が20%以上、②芽球増殖による髄外病変の存在、
 ③骨髄生検にて芽球の集蔟像の確認
急性期の70%は骨髄系の急性転化であり、好中性、好酸性、好塩基性あるいは単球性、また赤芽球や巨核球への移行もある。30%はリンパ性白血病とされる。なかには骨髄系とリンパ系両者の形質を有するものもある。
 
 本例は、Ph陰性、BCR-ABL陽性のCML(慢性期)としてブスルファンが6年半投与され、8ヶ月の移行期を経て急性転化したものである。転化時の芽球は大型で形態学的には同定不能であったが、CD41,CD61陽性の巨核球性への転化と診断された。
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■症例詳細データ
性別
年齢 60-64
取得年代 1980-1984
主訴 全身倦怠感、脾腫。
既往歴 胃潰瘍(50代)、糖尿病(50代)。
現病歴 近医にて全身倦怠感と白血球増加を指摘され、当科紹介入院となる。本例はPh陰性CMLとして診断後8年目に急性転化したものである。
検査所見 【初診時】
WBC 104,200/μl (芽球1, Promy13, My13, Met7,
St-Seg33, Ly3, Eo6, Ba8%)
RBC 459万/μl、Hb 13.8g/dl、Ht 42.1%、PLT 28.8万/μl
MCV 91.7fl、MCH 30.0pg、MCHC 32.8%、
NCC 53.6万/μl、MgK 187.5/μl (芽球3.0%, M/E比16.4)
【急転化時】
WBC 24,100/μl (芽球29, Promy3, My2, Met3, St-Seg45, Ly7, Eo1, Ba8, Mo2%)
RBC 239万/μl、Hb 6.1g/dl、Ht 23.9%、PLT 1.2万/μl
MCV 100.0fl、MCH 25.5pg、MCHC 25.5%、NCC 4.0万/μl(15.2%)
末梢血所見 【初診時】
白血球著増(104,200/μl)にて芽球は1%、以降顆粒球系66%(幼若型33%)と好酸球6%、好塩基球8%の増加がみられた。
【急性転化時】
白血球増加(24,100/μl)にて芽球が29%と増加していた。
それらは大型でN/C比は低く、クロマチンは粗網状であった。
骨髄所見 【初診時】過形成像にて芽球は1%で、M/E比は16.4と顆粒球系が優位であった。好酸球や好塩基球の増加もみられた。
【急性転化時】
低形成像にて芽球は15.2%と増加していた。
それらは末梢血と同様に大型でN/C比は低く、クロマチンは繊細から粗網状で、核は一部に無構造様であり線維化も認めた。
細胞化学所見 【初診時】NAP染色:陽性率26%、陽性指数52
【急性転化時】NAP染色:陽性率100%、陽性指数435
芽球様細胞はPO染色に陰性、PAS染色に微細顆粒状の陽性、ACP染色に粗大顆粒状の陽性がみられた。
形態診断 初診時は末梢血、骨髄ともに芽球の増加を認めない顆粒球系の増加と好酸球、好塩基球の増加を考慮してCMLを疑った。
8年後の急性転化時ではPO陰性の芽球として捉えたがリンパ系か骨髄系か不明であった。
免疫学的所見 【急性転化時】
CD33, CD41, CD61(+),
glycophorin A (±),HLA-DR (±)
分子生物学的所見 【初診時】
①45,X,-Y‥20/20 ②BCR-ABL (+)
【急性転化時】
①34,X,-Y,-3,-4,-5,-7,-9,11p-,-12,14q+,-15,-16,
-17,-20,22q-(not Ph),-22 (低4倍体の核型異常)
②17番染色体の片方の欠失(+)
リンパ節所見 未施行。
臨床診断 初診ではY染色体欠失を伴うPh陰性BCR再構成陽性のCMLと診断された。
ブスルファンが有効で6年半の慢性期を経過後、8ヶ月の移行期を経て急性転化に至った。
急性転化時の芽球はPO染色に陰性で巨核球系の表現型が陽性より巨核芽球性への転化と診断された。