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 8;21転座AMLはAML1/MTG8キメラ遺伝子を形成することが明らかにされた(Miyoshi H et al.1993)。AML1遺伝子は造血に重要な転写因子と考えられ、造血幹細胞から骨髄系の細胞への分化に関連する遺伝子とされてい...
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 8;21転座AMLはAML1/MTG8キメラ遺伝子を形成することが明らかにされた(Miyoshi H et al.1993)。AML1遺伝子は造血に重要な転写因子と考えられ、造血幹細胞から骨髄系の細胞への分化に関連する遺伝子とされている。
MTG8遺伝子はt(8;21)転座型白血病に特異的に発現する転写因子と考えられている。両者が融合したキメラ遺伝子はキメラ蛋白へ翻訳されて異常な転写因子が発現し、AML1遺伝子、MTG8遺伝子の機能をdominant negativeに抑制することにより、造血幹細胞の分化調節が障害されて白血化すると考えられている(棚木ほか.1995)
     
 本例は骨髄よりも末梢血に芽球が20%以上(実際は26%)を超えることよりAMLの範疇と考えAML-M2と診断されたものである。後報告にてt(8;21)やAML1/ETO遺伝子が証明され、8;21転座M2と診断された。
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■症例詳細データ
FAB分類 > 急性骨髄性白血病 (AML) > 成熟を伴うAML (M2)
性別
年齢 05-09
取得年代 2000-2004
主訴 発熱、顔面蒼白、出血斑。
既往歴 特になし。
現病歴 血液検査にて貧血を認め、白血球増加にて芽球がみられたので入院となる。
検査所見 WBC 20,600/μl(芽球26.0, Promy16.0, My12.0, Met7.0, St-Seg13.0, Ly17.0, Mo4.0, Eo5.0%)
RBC 218万/μl、Hb 7.3g/dl、Ht 22.1%、PLT 2.2万/μl、MCV 101.4fl、MCH 33.5pg、MCHC 33.0%、
NCC 34.5万/μl、MgK 50.0/μl (芽球16.0%)、LD 681IU/l、CRP 0.22mg/dl、TP 7.6g/dl、BUN 10.6mg/dl、ALT 10IU/l、AST 24IU/l、UA 2.8mg/dl、Ca 9.4mg/dl
末梢血所見 白血球増加(20,600/μl)にて芽球は26%、以降幼若型を含む顆粒球系の増加がみられた。
大球性正色素性貧血を呈し、赤血球には奇形赤血球を認めた。
骨髄所見 過形成像にて芽球は22%、以降顆粒球系の分化段階がみられた。
顆粒球系には偽ペルゲル核異常や細胞質に好塩基性の縁取りがみられた。アウエル小体は僅かにみられる程度であった。
細胞化学所見 芽球から好中球までにPO染色の陽性態度は強く100%の陽性がみられた。
形態診断 末梢血、骨髄の芽球はPO染色に陽性より顆粒球系を示唆した。芽球の割合が骨髄では20%以下、末梢血では20%以上であった。末梢血に20%以上を示すことよりAMLの範疇とみなした。アウエル小体は乏しいが、顆粒球系の形態像とPO活性の強さよりt(8;21)M2も考慮すべきかと思われた。
免疫学的所見 CD2(33.9%)、CD7(31.1%)、CD13(47.2%)、CD19(42.5%)、CD33(49%)、CD34(50.2%)、HLA-DR(48.4%)
分子生物学的所見 ①45,X,-Y,t(8;21)(q22;q22),del(11)(p11p13)[19]
②46,XY[1]
③AML1/ETO gene(+)
リンパ節所見 未施行。
臨床診断 末梢血の芽球が20%以上を超えることでAMLの範疇と考えられ、AML-M2と診断された。
後報告にてt(8;21)やAML1/ETO遺伝子が証明され、8;21転座M2と診断された。