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 AML-M3は第15番染色体にはPML遺伝子、第17番にはretinoic acid receptorα(RARα)遺伝子が局在している。両者は15;17転座により融合遺伝子を形成する。RARにはαのほかにβ、δがあり、ホモ二量体、あるいはヘテロ...
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 AML-M3は第15番染色体にはPML遺伝子、第17番にはretinoic acid receptorα(RARα)遺伝子が局在している。両者は15;17転座により融合遺伝子を形成する。RARにはαのほかにβ、δがあり、ホモ二量体、あるいはヘテロ二量体を形成し、転写因子として作用する。PML遺伝子産物も転写遺伝子として作用する。PML/RARα蛋白は、RARα、PML蛋白のいずれに対してもdominatnegativeに作用し細胞の分化をブロックしている(de The H et al.1990,大野竜三.1995,Kakizuka A et al.1991)。
     
 本例は、白血球減少(1000/μl)に伴う病的前骨髄球の出現(14%)がポイントである。形態学的には核形不整や細胞質にアズール顆粒の集合したものか、あるいは封入体として解釈すべきものがみられた。HLA-DR陰性でPO染色の強陽性や表現型、またt(15;17)やPML-RARα遺伝子が証明されM3と診断された。
 
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■症例詳細データ
性別
年齢 50-54
取得年代 1995-1999
主訴 歯肉発赤
既往歴 特になし。
現病歴 歯肉発赤、白血球減少。
検査所見 WBC 1,000/μl (Ab.Promy14.0, Seg26.0, Ly58.0, Eo.2.0%)、RBC 353万/μl、Hb 11.5g/dl、Ht 34.3%、
MCV 100.0fl、MCH 32.5pg、MCHC 33.5%、
PLT 11.0万/μl、NCC 5.6万/μl、Mgk 0/μl (Ab.Promy88.0%)、LD 348IU/l、TP 7.0g/dl、CRP 2.50mg/dl、BUN 18.3mg/dl、UA 5.5mg/dl、Ca 9.3mg/dl、AST 33IU/l、ALT 64IU/l、Fbg 164mg/dl
末梢血所見 白血球著減の分類にて芽球様細胞は歪な核にアウエル小体や微細顆粒を有することから病的(異常)な前骨髄球と同定した。
骨髄所見 低形成像にて末梢血と同様な異常顆粒(微細~粗大)を有する芽球様細胞がみられる。
細胞質には粗大顆粒状のものや円形~長形の封入体様にもみられ、アウエル小体は束状(ファゴット細胞)を呈するものがみられた。形態像より芽球様細胞は病的前骨髄球と同定した。
細胞化学所見 病的前骨髄球はPO染色に細胞質一面に充満するほどの強陽性の態度であった。
形態診断 末梢血、骨髄の病的前骨髄球の出現よりAML-M3を考えた。
ただ、本型で細胞質にみられる大きな封入体様物質は珍しいものであった。
それは核から派生したものかアズール顆粒の収束したものか不明であり、確固たる証拠には電顕における検索が必要と思われた。
免疫学的所見 CD13(53.2%)、CD33(81.8%)、HLA-DR(12%)
分子生物学的所見 46,XX,t(15;17)(q22;q11~12)[5]
46,XX,der(15)t(15;17)(q22;q11~12)ider(17) (q10)t(15;17)(q22;q11~12)[1]
46,XX[15]
PML-RARα(+)
リンパ節所見 未施行。
臨床診断 病的前骨髄球は細胞質に奇妙な封入物がみられ、DIC所見は軽症であったが、CD33の陽性、HLA-DRの陰性とt(15;17)ならびにPML/RARα遺伝子の証明はAML-M3を支持するものであった。JALSGのAPL97-0180にて治療が開始され、地固め療法にて経過観察中である。