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 本例は食餌歴として沢蟹の醤油漬けを生食し、好酸球増多に伴うIgEの高値がみられた。好酸球増多の原因として胸腹部CTにおいて右肺中葉にすりガラス影(一部に結節)を認め、冠状断から右中葉から右小葉まで小葉間...
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 本例は食餌歴として沢蟹の醤油漬けを生食し、好酸球増多に伴うIgEの高値がみられた。好酸球増多の原因として胸腹部CTにおいて右肺中葉にすりガラス影(一部に結節)を認め、冠状断から右中葉から右小葉まで小葉間裂を貫いたものが上下にみられ虫体の痕跡が考えられ、左肺下葉においても同様な所見であったことより寄生虫症としてウエステルマン(Westermann)肺吸虫症や宮崎肺吸虫症が疑われた。ウエステルマン肺吸虫は肺のなかに虫嚢を形成するのに対し、宮崎肺吸虫では肺実質内に入ることなく胸腔内に生息すことより、本例はウエステルマン肺吸虫の感染症と診断された。頭部MRIで頭蓋内感染は否定され、視力低下については寄生虫の浸潤による眼内炎などは認めなかった。
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■症例詳細データ
性別
年齢 60-64
取得年代 2005-2009
主訴 視力障害、右季肋部違和感
既往歴 特になし
現病歴 2ヶ月前より発熱、視力障害や倦怠感を訴えたため近医を受診し、胸写に異常はなく、CTで腸の腫脹を指摘された。その後、背部痛や体重減少(5kg/月)、2週間前より右季肋部違和感を認めた。血液検査で好酸球が20%と上昇し、胸写で胸水貯留、腹部CTでリンパ節腫大を認めたため、血液疾患や寄生虫感染が疑われ当院へ紹介された。食餌歴に沢蟹の醤油漬けを生食していた。
検査所見 WBC15,200/μl
(St5.0,Seg6.0,Eo48.0,Ba2.0,Ly36.0,Mo3.0%)、RBC387万/μl、Hb11.4g/dl、Ht36.0%、MCV93.0fl、MCH29.4pg、MCHC31.6%、PLT34.2万/μl、TP7.6g/dl、BUN10.6mg/dl、
T-bil 0.6mg/dl、UA4.2mg/dl、AST26IU/l、ALT23IU/l、LDH268IU/l、VB12 1,240pg/ml、Fe78μg/dl、CRP0.42mg/dl、IgE942IU/l、IgG1,760mg/dl、IgA143mg/dl、CEA3.5ng/ml、CA125 136.4U/ml
【anti parasitic antibody】P.westermanii (2+)、P.miyazakkii (2+)
末梢血所見 白血球増多(15,200/μl)のもと好酸球の増加(7,296/μl)が顕著であった。好酸球は成熟型で占められているが、輪状核や核糸が断裂したもの、また三核のものやアポトーシスなどがみられた。好酸球100個中の形態は桿状核が6%、2分葉が83%、3分葉が11%みられた。
骨髄所見 ND
細胞化学所見 好酸球はPO染色やクロロアセテートEST染色に陽性であった。
形態診断 末梢血の好酸球増多(48%:7,296/μl)より、アレルギー疾患や寄生虫症、また薬剤によるものを考え除外法による診断を考えた。後報告より、食餌歴に沢蟹の醤油漬け(生食)があったことより寄生虫症を疑い、免疫抗体検査で、ウエステルマン肺吸虫や宮崎肺吸虫が陽性(2+)であったことより、ウエステルマン肺吸虫症を考えた。
免疫学的所見 ND
分子生物学的所見 ND
リンパ節所見 ND
臨床診断 好酸球増多の原因として、胸腹部CTにおいて右肺中葉にすりガラス影(一部に結節)を認め、冠状断から右中葉から右小葉まで小葉間裂を貫いたものが上下にみられ虫体の痕跡が考えられ、左肺下葉においても同様な所見であったことより寄生虫症としてウエステルマン(Westermann)肺吸虫症や宮崎肺吸虫症が疑われた。ウエステルマン肺吸虫は肺のなかに虫嚢を形成するのに対し、宮崎肺吸虫では肺実質内に入ることなく胸腔内に生息すことより、本例はウエステルマン肺吸虫の感染症と診断された。頭部MRIで頭蓋内感染は否定され、視力低下については寄生虫の浸潤による眼内炎などは認めなかった。