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 形質細胞骨髄腫の特殊な臨床病型には、①非分泌型骨髄腫、②くすぶり型骨髄腫、③無症候性骨髄腫、④形質細胞性白血病、⑤形質細胞骨髄腫前状態などがある。
     
     
 本例はIgD骨髄腫であるが、本型は全骨髄腫の0.6~...
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 形質細胞骨髄腫の特殊な臨床病型には、①非分泌型骨髄腫、②くすぶり型骨髄腫、③無症候性骨髄腫、④形質細胞性白血病、⑤形質細胞骨髄腫前状態などがある。
     
     
 本例はIgD骨髄腫であるが、本型は全骨髄腫の0.6~3.8%と報告されている。また大半はλ型であり本例のようなIgD(k)型は極めて少ないとされる。本例は経過中に末梢血に骨髄腫細胞が出現し、胸水貯留、神経症状の増悪など臨床的に腫瘍体積は増加したと考えられたが、血清IgDはむしろ減少傾向にあった。この現象については薬剤の影響も無視できないが、末期には骨髄腫細胞の異型性がさらに著明となり、また表面IgDが検出されたことなどから、おそらく未熟な段階に変化してIgDの産生または分泌が低下した可能性が考えられる。
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■症例詳細データ
性別
年齢 45-49
取得年代 1995-1999
主訴 腰痛。
既往歴 特になし。
現病歴 腰痛を訴え骨髄穿刺が施行されたが形質細胞が20%みられた。X線像にて左坐骨、右大腿骨に破壊像がみられ、骨シンチグラムでも胴部に異常の取り込みがみられた。
肝脾腫(-)、リンパ節腫脹(-)
検査所見 WBC 4,400/μl (特に異常なし)
RBC 378万/μl、Hb 13.1g/dl、Ht 37.9%、PLT 23.0万/μl
MCV 100.3fl、MCH 34.6pg、MCHC 34.6%、NCC 2.6万/μl、MgK 0/μl (plasma cell20%)、TP 8.5g/dl、Ca 10.2mg/dl、尿蛋白(2+)、IgG 687mg/dl、IgA 51mg/dl、IgM 22mg/dl、IgD 820mg/dl
胸水IgD 220mg/dl、尿中BJ-protein(+)
末梢血所見 大球性正色素性貧血にて連銭形成がみられた。
白血球分類には異常所見はみられなかった。
骨髄所見 顕著な低形成にて比較的大型な形質細胞が20%みられた。
クロマチンは粗網状で核小体を有するものが多かった。
くすんだ細胞質には打ち抜き状の空胞もみられた。
胸水にも形質細胞の浸潤がみられ60μm大におよぶ大型細胞もみられた。
細胞化学所見 形質細胞はPO染色、PAS染色に陰性、ACP染色、β-グルクロニダーゼ染色に凝集状の陽性がみられた。
形態診断 多発性骨髄腫基準(SWOG.1986)の30%は割るものの、大型で核小体が明瞭などから骨髄腫細胞と同定し多発性骨髄腫を考えた。免疫グロブリンではIgD-k型が証明されモノクローナルなものであった。
胸水中の骨髄腫細胞はパパニコロウ染色でも明瞭な核小体がみられた。
免疫学的所見 CD38(+)、CD79a(+)、CD56(+)、CD138(+)
CD19(-)、CD20(-)
分子生物学的所見 未詳。
リンパ節所見 未施行。
臨床診断 多発性骨髄腫の数的基準は満たさないが質的異常とIgD-k型のモノクローナルな証明よりWHO分類の形質細胞骨髄腫と診断された。
IgD骨髄腫は全骨髄腫の0.6~3.8%と報告されているが、大半はλ型であり本例のようなk型は極めて少ないとされる。