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 本例は骨髄の芽球が90%以上(実際は95.2%)を認め、それらがPO染色に大半が陽性よりAML-M1と診断された。芽球はHLA-DRが陰性で、形態はスプーンでえぐられた様なカップ状の形状を呈し、FLT3遺伝子の検索から...
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 本例は骨髄の芽球が90%以上(実際は95.2%)を認め、それらがPO染色に大半が陽性よりAML-M1と診断された。芽球はHLA-DRが陰性で、形態はスプーンでえぐられた様なカップ状の形状を呈し、FLT3遺伝子の検索からそれが証明された。
 FLT3遺伝子は細胞表面に発現している受容体型チロシンキナーゼの遺伝子であり、その受容体の細胞膜に近いところで繰り返し変異(ITD変異)が起こっている場合、FLT3からのシグナル伝達系が異常に活性化され、細胞増殖が促進されると考えられている。
FLT3遺伝子は横田昇平ら(2005)によって世界で始めて報告されたとされ、AMLの約1/3に検出され、当該疾患の難知性を示す遺伝子であることが明らかにされており、この変異が確認された症例では治療後の経過がよくないとされる。形態のカップ様とFLT3の関係は明らかではないが症例の集積が必要である。
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■症例詳細データ
FAB分類 > 急性骨髄性白血病 (AML) > 成熟を伴わない未分化型のAML (M1)
性別
年齢 60-64
取得年代 2005-2009
症例の種類 非典型例
主訴 全身倦怠感、歩行時のふらつき
既往歴 高血圧、痛風
現病歴 ふらつき、両頚部に米粒大のリンパ節腫脹あり、肝脾腫なし
検査所見 RBC 157万/μl、Hb 5.2g/dl、Ht 15.6%、MCV 92.2fl、MCH 33.0pg、MCHC 33.2%、PLT 6.0万/μl
WBC 128,900/μl、NCC 5.5万/μl
TP 7.8g/dl, T-Bil 0.6mg/dl, AST 23IU/l, ALT 16IU/l, LD 405IU/l, Glu 191mg/dl, HbA1c 8.2%,
Fe 178μg/dl, UIBC 55μg/dl, Ferritin 1,317ng/ml, VB12 164pg/ml, Folic acid 1.6ng/ml
末梢血所見 重度の貧血症と著増(128,900/μl)する白血球の分類にて芽球は98%みられた。それらはPO染色に陽性であった。
骨髄所見 低形成像ながら芽球を95.2%認めた。それらは全般に小型でN-C比は高く、クロマチンは繊細から粗網状で核小体を有し、なかに微細顆粒を有するものがみられた。それらの一部に核内がスプーンでえぐられた様な形状(カップ様)を呈するものがみられた。
細胞化学所見 全般に小型の芽球群はPO染色が陽性で、PAS染色、EST染色は陰性であった。
形態診断 骨髄で芽球が90%以上(実際は95.2%)を認め、それらはPO染色に陽性のことからAML-M1を考えた。
免疫学的所見 CD13 (8.2%)、CD33 (57.1%)、CD56 (30.8%)、HLA-DR (0.2%)
分子生物学的所見 46,XY [11]
FLT3変異解析(+)
リンパ節所見 N.D
臨床診断 芽球は末梢血、骨髄に90%以上を認め、PO染色の陽性よりAML-M1が考えられ、表現型でHLA-DRが陰性よりその陰性例が疑われた。さらに形態的にカップ様を呈するものがみられたためFLT3変異解析を行ったところ陽性を認めたことよりカップ様の形態を呈したHLA-DR陰性AML-M1と診断された。